2016のDVDも期待してます!
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※長文です。
昨2015年9月に、日本武道館で行われた初音ミクライブコンサート「マジカルミライ2015」を収めたブルーレイディスク。 ビートルズ来日公演から半世紀。日本音楽シーンの殿堂となった日本武道館に、遂にバーチャルシンガーが降り立つ日を一体だれが本気で予想していた事だろう。07年夏の誕生当時には冗談半分にささやかれていたその日は、しかし夢でも幻でもなく確かに実現したのだ。そんな途方もない事実を再確認させてくれるのが本ディスクである。 【公演本編について】 公演時は色々と機材のトラブル等もあったが、本ディスクでは完全な形でのライブ全編が収録されている。(トラブル時の様子については特典映像ディスクに収録) 演奏については、弦楽器や管楽器までついた12年の「最後のミクの日感謝祭」を別格にしたとしても、過去有数の出来栄えだろう。新規曲・定番曲、共に武道館という場に相応しい骨太なバンドアレンジがなされ、原曲のイメージを更にライブ向けに違和感なく発展進化させたものとなっている。(とにかく今回はこれまで以上に演奏陣の気迫が感じられた) プロジェクター増設のたまものかミク達のモジュールはより鮮明となり、衣服やツィンテールの揺れの自然さも含めマジカルミライ系統では最高峰の存在感を発揮。モーションも、筋肉のしなやかさすら感じさせる「エンヴィキャットウォーク」のキャットダンスなど新曲はどれも目を見張るものがあり、既存曲についても「shake it!」の思わずニヤリとなる改変など、見ていて飽きさせない。 セットリスト構成は、ボーカロイド文化の可能性を世界に示す「Tell Your World」から始まり、近年の作品やライブ新規曲を中心とした前半から非常に強烈。リンレン、カイト、メイコにもそれぞれ新曲が用意されている。そして「深海少女」の中盤以降は定番曲が中心となるが、ルカによるDJプレイが楽しい新曲「愛Dee」なども挿入され停滞を許さない。 終盤は「packaged」「ワールドイズマイン」と、今や古典となった最初期の名曲群へと遡行していき、そして「Tell Your World」とあらゆる意味で対をなすテーマを持つ「ODDS&ENDS」に収斂する。 アンコール以降の演出も含め、セットリスト構成そのものが初音ミクを取り巻くこれまで・これから、奥行き・広がりを表現していたように思う。 【本編BDについて】 音声はステレオとDTS5.1CHの2種類。温室はクリアで、音に関しては不満はほとんどない。 映像についても、ミク達は勿論、背景映像、演奏陣、観客席、会場全体の俯瞰、いずれもキメ所を外さない編集がされており、当日の熱狂を様々な角度から余すところなく追体験できるものに仕上がっている。 唯一にして最大の不満は、マジカルミライ2014、MIKU EXPOに引き続き、またもや歌詞字幕表示がカットされていることである。 詳しくは後述するが、今回の公演ほど歌詞表示の重要性を思い知ったことはなかった。これについては、今後も繰り返し改善を訴え続けていきたい。 【特典ディスクについて】 TOKYO MXで放送されたメイキングや当日のトラブルの模様を伝える貴重なメイキング映像ほか、素晴らしい演奏を披露してくれたバンドメンバーの方々のインタビュー、イベント当日のダイジェストなどが収録。 また、マジカルミライ2014の時と同様、一部楽曲(「39」「Hand in Hand」)の背景演出用映像が収録されている。この2曲はライブ当日も映像演出の内容の良さが記憶に残っていたので、非常にうれしい。 そして、今回からの初の試みとして、モーションの特徴的な一部楽曲の様子(「愛DEE」「shake it!」「Hand in Hand」)を、ミク達にフォーカスした映像も収められている。それぞれの演技細やかなパフォーマンスを細部まで楽しむにはもてこいだろう。 最後に、今回の公演をあらゆる意味で特別なものとしてくれたダブルアンコールについて述べたい。 【ハジメテノオト】 初音ミクが、生バンドによる演奏をバックに2時間余りの単独公演をフルにこなすという現在のライブ形式は、2010年の「ミクの日感謝祭」によって確立されたが、冒頭、はじめて披露された歌声がアカペラによる「ハジメテノオト」であった。 初めての音は なんでしたか? あなたの 初めての音は… ワタシにとっては これがそう だから 今 うれしくて このバーチャルシンガーが単独ライブを行うという光景は世界的に驚嘆を持って受け止められ、以来数年、初音ミクを巡る状況は良くも悪くも様変わりした。変わっていったのはミクだけでなく、それを取り巻く我々も同じだった事だろう。 そしてあの日、記念すべき武道館公演の大トリを飾った曲こそ、今再びの「ハジメテノオト」であった。 あなたが かわっても 失くしたくないものは ワタシに あずけてね 上部スクリーンには「さぁ歌え」とばかりに歌詞字幕が表示され、観客達は皆ミクと共に歌った。ミクの声はあの日と変わらぬままだったが、一方の我々の歌声は次第に嗚咽混じりとなり…。 歌詞字幕が無いという不満とかはもうどうだっていい。今はただ、あの他に喩えようもない思いの昂りに再び三度目頭を熱くするのみである。 |