映画「この世界の片隅に」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」のファンになりましたが、もともと漫画やアニメにそれほど興味が無かった私にとって、この美術画集を購入するか迷いました。
でも、丁寧で柔らか差の中に芯があり、それなのに描き込み過ぎず、緻密過ぎないその画風は、実際の映画やガイドブックなどを何度も観るにつけ、よりじっくり観たいという想いが湧き上がっていました。 また、映画は、登場人物や物語こそフィクションですが、物語の周囲にある出来事や背景・風景は実際にあったものと云われています。それは証言や資料、写真に基づいて限りなく事実に寄り添ってつくりこまれていて(原作漫画も同じで、映画では更に深掘りしている)、資料性が高いと思いました。 私が直に知らないその時代を、白黒写真でしか知らないその時代をもっと実感したいとも思いました。 迷った末に購入しましたが、何度もこの映画を観て(最近発売されたディスクも)いながら、見えていない部分がたくさんあることに気づかされています。ページをめくる度に新たな発見があり、驚きと感心の連続です。 つくり手であるこの映画の監督さんが、この映画を鑑賞した人に実感味をもってもらう為に相当な手間をかけた...という意味合いのことを、どこかのインタビューで語っていたのを思い出しました。観る側が変に意識せずに映画に没入してもらう為だけでなく、この時代を生きた方に敬意を払うことを込めてどこまでも正直に描かれたことが、この画集から伝わってきました。 その点では、大変満足しています。 ただ、出来ればもう一回り大きな版が良かった...とも思いました。 とはいえ、アニメの背景画がCGでやたらと描きこんでいたり平面的という勝手な先入観は、ここにはありません。多くが手描きということも、この映画の大きな魅力になっていることを、この画集から再認識することが出来ました。 |