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  • 2025年11月10日06:32
(メモ・感想です)

 全体としてわかりやすいとは言えず、著者も言うように専門外の分野なので、"?"という部分も見受けられ、証拠を元にわかりやすく組み立てた『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(矢部 宏治)に比べて劣るように思います。

小生の印象に残った点は以下です。
・pp.221-8: 近衛文麿は上奏文で「敗戦することで、主体性や変革(イノヴェーション)が日本に目覚めてしまうこと(i.e.國體の崩壊)を防ぐ」「右翼/軍人は"共産主義者(アカ)"であり、國體を否定する勢力」等と書いた。それを分析した河原宏は、「國體とは、主体性やイノヴェーションを否定すること」という本質を見出した。
・米軍に隷従し、アジアに威張る日本は、もう長くは続かない。
・千島列島はサンフランシスコ条約で日本は放棄しており、旧ソ連が2島返還すると言った際には米国ダレスが「千島は日本のものではない。勝手に受け取るな」と日本を恫喝した。北方領土は日本のものではない。

 著者は「國體は明治に始まった」としてますが、その見方は甘いかと。小生は、イノヴェーションを嫌う、「クウキ」の日本伝統風土: "國體"という原始宗教は、弥生/古墳時代の稲作/天皇制と共に始まり、不死鳥のように続いているのでは?と考えています。俯瞰的/横断的に考えることがタブーになっているのは、もっと根が深い古代性だと思うのです。
  • 2025年11月09日19:27
< パレスティナ人もユダヤ人も、ちゃぶ台を囲んで一緒に食事を >

(メモ・感想です)

 『わたしは15歳』『Dear 16とおりのへいわへのちかい』『じじつは じじつ、ほんとうのことだよ』に続く、イマジネイション・プラスの良絵本。ダニーさんには、「イスラエルの軍国主義洗脳教育に気付いた」という、彼のセミナーでお会いしたことがあり、彼の日々・全国での啓蒙活動に勇気づけられてます。

 小生は、暴力団のようなシオニストらには殆ど会ったことはなく、世界中の人道的なユダヤ人に多々お会いしているので、イスラエルのパレスティナ人虐殺を非難することが、「反ユダヤ」だとは思ってません。

 この絵本では、パレスティナ人もユダヤ人もその他の人々も、丸くなって食事ができる「ちゃぶだい」を作るようになったダニーさんに焦点を当ててます。ちゃぶ台は、アーサー王の円卓の騎士の円卓のようなものなのかもしれません。

 諦めたら、人類は終わってしまいます。ダニーさんと共に、戦争/兵器に反対し、対話での平和を創っていくことが、現実的な道なのだ、と小生も思います。
  • 2025年10月27日17:48
< なぜトランプ/ネタニヤフ/高市が勝つのか? >

 フィレンチェの副市長だった著者の語りは、カーニバル/祭りから始まります。そこは普段の鬱憤を晴らす場。人間の暴力的な本能が引き出される場。

 TV番組のように、注目を集め、退屈させないことが、トランプの戦略。その裏には、「大衆にウケるネタ、その反応を分析し、発信を改善し、そして今は一人ひとりの特性に合わせて、煽動メッセージを送るアルゴリズム」があります。公約など実現する必要はありません。大衆が「彼/彼女は、自分に近い本音の人間だ。『CO2もダメ、牛肉もダメ、弱い者いじめもダメ』と押し付けてくるポリティカル・コレクトなエリートとは違う」と思えば良いわけです。

 大衆の不満/疎外感/怒りのエネルギーを結集させて、自由に操る、スティーブ・バノンのような仕掛人たち。イタリアは大衆操作のシリコンバレーとか。

 伊「五つ星運動」、ハンガリー、ネタニヤフ、トランプ、そして高市。フェイクやウソを、エリートから指摘されると、「エリートが反論するなら正しい」と結束。エリートへの怒りを焚き付けて商売するSocial Media。

 この本のオリジナルは2019年刊行なので、AIによる操作が記載されてません。今は更にAIによって大衆が煽動される時代。穏健な中道メッセージは拡散されずに衰退し、極右/極左がまとまる外国人排斥が各国で起きてます。そして、「直接民主制」の名の下に、各人毎に最適化された極端なメッセージで、選挙が流動化します。「共通の事実」が無くなることは対話の公共圏の消滅を意味します。これは民主主義の否定のみならず、「AIによる人類排斥」の端緒なのかもしれません。大変な時代が始まったことを知る、必読の一冊だと思います。
  • 2025年10月27日14:39
 イタリアの3つの「地区の家」と3つの「屋根のある広場: 図書館」の取り組みを紹介しながら、住人のインクルージョンや力の引き出しを考えていきます。

 小生の印象に残った点は以下です。
- 地域の産業だった農業の最後の農家の廃屋、公共シャワー所、地域の産業だった塗料工場の跡地等、地霊(ゲニウス・ロキ)の尊重も魅力に繋がる。
- 積極的な住人には企画づくりから、そうでない住人にはプログラムのお試しから。
- 貧困者や困ったことがある人には、どこに相談に行けばいいかを教えるワン・ストップ窓口。所得の機会や生産センターにもなる。
- 住人が持っている本来の力を引き出し、支援する(社会education)
- 誰も排除せず(official)、共通の関心について(Common)、オープンに話し合う、ユルゲン・ハーバーマスやハンナ・アーレントの公共圏・民主主義、そしてスタートアップ育成の「知的生産拠点」
- 誰でも受け入れ、一緒に飲み食いして信頼を育める「カフェ」が公共施設の中核。そこで「自分もいていい」「ここであればやっていける」「自分が関係ある拠り所」から、「手芸を教えてみたい」「本を紹介してみたい」等のイヴェントが始まる。
- カフェやベーカリーは、施設の主要収入源にもなる。
- 地域の産業の跡は産業ミュージアムにもなり、3Dプリンターを置いて、思いついたものを造るというDNAにも繋がる。
- 既にその場で過ごしている人々の様子が「そこで何をしていいか」の暗黙知になる。吹抜けから視認できたり、ガラス貼りで活動が外から見えることは大切。
- 日本でも伊東豊雄が今治/大三島の旧法務局を改造して「みんなの家」をやっている。日本にはこれから廃校舎が多量に出る。
- 北大/太田実は「コミュニティ・アーキテクト」と言っている。
- その意義、社会的・倫理的な視点というものを住人が考えられるようになる。
- 19c末、仏・ベルギー・独・伊には「労働者の家」という多様な活動拠点があった。
- 新自由主義の商業施設は、ボローニャの図書館から撤退した(家賃未納)。
- 大学の窓口として図書館は機能する。大学側メリットも大きい。
- 「読むために生まれてきた」(幼児読み聞かせ)、「生きた本の図書館」(高齢者や移民・マイノリティ等に30分話を聴ける。2000年にデンマークで誕生)
- 次の一手を助言し、励ます。新しい社会の鏡。人間生活から価値が生まれる(記録・記憶・アイデンティティ・繋がり・創造)。

 今生きている多様な人々が本来持っている力を引き出し、政策・経済活動といったイノヴェーションを支援し、本物の幸せを創っていくことが「知」の本質だということに気付きました。大学とも通ずる、データや記録を元に対話する、図書館・地域センターの本来の姿がここにあります。
  • 2025年10月23日20:47
< 大衆を悦ばしてあげる >

(メモ・感想です)

 女性首相の元、在日韓国人へのリンチ/レイプが続く、近未来の日本。フェイクで集団をまとめる右翼たち。壊滅する新大久保。虐げられた主人公たちがリアルに描かれます。

 その中で、「大衆に勝とうとしては駄目、むしろ悦ばしてあげないといけないんです」という主人公の妻。あちこちで集めた、そのための駒たち。

 でも、大衆はクウキで動き、次の標的は在日イスラム教徒たちに。イナゴの大群のような、メディア操作者らと大衆の、なんとも言えない嫌らしさが、強く印象に残ります。
  • 2025年10月17日19:00
< イスラエルとパレスチナの双方から見た、共感の本。 >

(メモ・感想です)

 子どもでも読めるように、平易に、歴史と国際法とを踏まえて書いた良本。ユダヤ人ではなくて、イスラエルが長年多数の国際法違反を犯し、ネタニヤフは国際逮捕状が出ていることも書かれています。イスラエルの建国(シオニズム)自体が、ホロコーストや宗教とは関係なく、植民地主義で暴力的なものであり、それからずっと無法(ならずもの)国家であることは初めて知りました。(ホロコースト生還者達へも、イスラエルは攻撃したとは!)

 英国は2枚舌ではなく3枚舌、国連が戦後すぐに、米ソ共にイスラエルを味方に付けるべく、パレスチナに不利な決定をしたことも初めて知りました。エジプトも加害者。

 でも、イスラエルは全世界を敵にして国際法を破り続けていては、長くは存在できません。イスラエル内外の心あるユダヤ人も、イスラエルを非難しています。そして、軍を信奉する洗脳を受けたイスラエル人が、西岸地区やガザ地区の人々を人間だと思っていないことは、「伝統日本の沖縄に対する態度」と比されていて、なるほど~と思いました。戦争を反省しない麻生/高市とネタニヤフとの差もわずかかもしれません。

 皆様は無力ではないんだ、とこの本は説いてます。
  • 2025年10月17日18:28
(メモ・感想です)

桃園川(中野)の側で生まれ、ニューヨーク時代を経て、鮫河(四谷)の崖に住む著者の文章や写真は、小生の肌に合っていて、「東京山の手ハイカラ散歩」以来のファンです。この本は、欧米と日本の間に挟まり、散歩好きだった永井荷風の「日和下駄」の文章や章立てを散りばめながら、山の手の尾根や坂や谷を巡った随筆。手書きの地図がいい味を出してます。山の手の本当の姿を知りたい方にお薦めの本です。

小生の印象に残った点は以下です。
・永井荷風の父は、米国留学を経た明治の高級官僚。小石川の伝通院近くの3段庭(坂にある3つの家を買ってくっつけた)の家に住んでいた。そこには狐が出た。その頃、山の手で丘の上の家を買うと、谷の貧民家群の眺望が必ず付いてきた。
・永井家は、田園風景に憧れて、曙橋北西に引越。南には市ヶ谷刑務所と東京監獄がまだあり、大逆事件(冤罪)の幸徳秋水らは、1911年に東京監獄で処刑された。この自由粛清の事件に対して、荷風は、「これ迄見聞きした世上の事件の中で、この折程云うに云われない嫌な心持のした事はなかった」「以来わたしは自分の芸術の品位を江戸戯作者のなした程度まで引下げるに如くはないと思案した」と書いている。
・荷風が「日和下駄」を新聞に連載していた1914-15年当時は、父の死、離婚、芸者との結婚/色里通いによる破局、といった中だった。散歩は荷風に活力を与えるものだったのかもしれない。

再び暗い伝統社会に突入しつつある今の日本において、尾根・坂・谷道のある山の手の散歩は、荷風同様に、いい考えを思い付き、活力を得るためにもいい手段なのかもしれません。
  • 2025年10月14日19:17
< 対話の数学シリーズを、ありがとうございました。>

(メモ・感想です)

 数学ガールシリーズは、2007年に主人公が高校に入学した最初の1冊から、秘密ノートや物理ノートも含め、全冊読んできましたが、主人公が高校を卒業してしまう本書が最終巻。『数は生きている』(銀林 浩)以来の「対話の数学」の名著シリーズでした。

 本書は、リーマン論文を概観するための、複素関数入門になってます。いつもの村木先生のカード: 「ln(-1)」で、主人公が「πi」と答えて間違えるところから。そう、正解の「πi+2nπi」の持つ周期性が、複素関数の不思議なところだとわかります。そして、変数を複素平面で、水平線群/垂直線群/円群などで示し、それが複素関数でどう変換されるか?を、複素平面上で示すという、ペア・グラフ表示によって、そのグルグル回る不思議な関数ぶりを目にすることができます。オイラーのexp(iθ)=cosθ+isinθがこのシリーズの通奏低音でした。回転と拡大縮小では、反転(例: 共役複素数)はできない、というのが本書に出てきて、目からウロコでした。

 リーマンは39歳で肺病で亡くなってしまい、未だに未解決のリーマン予想は、ゼータ関数のオイラー積表示によって、素数の分布との関係が現れてきます。一見淡々と続く整数は、素数によって構造化されるわけですが、ゼータ関数の複素関数化から、一歩一歩、リーマン論文に必要な数学構造を追いかけていくことができます。

 リーマン論文の章からは、スピードが早くなって行間を検算するのは、それなりに大変。中学生のユーリを参加させることで、「流れを追うだけで良いよ」となります。

 志望どおり、学校の数学の先生になった主人公。めくるめく数学の世界に、後輩たちを導いているのでしょう。数学ガールは、物理ノートシリーズで「複素電力」を扱って欲しいなと要望していたのですが、書いてくれないかな~。

 プロテスタントらしく、博愛に溢れる、数学の入門書シリーズを書いてくれた、同学年の著者に、「ありがとうございました」と言いたいです。
  • 2025年10月05日19:17
< 「戦争失業者に職を」から「地域で仕事を労働者が創る」へ >

(メモ・感想です)☆3

 全学連(全共闘ではなく)委員長だった、1947年生まれの著者。全員強制加盟の自治会: 全学連と、セクトの全共闘とは違うとのこと。この全学連の知人から、1949年戦後失業(戦争未亡人,朝鮮人,被差別部落の方、レッド・パージされた方)対策の全日自労に誘われ、中央執行委員に。この事業打ち切りに伴い、中高年雇用・福祉事業団全国協議会事務局長として、1979年に、イタリアの事例から、失業者が自ら主体になって仕事を創る、7つの原則を推進。これが、2022年施行の労働者協同組合法制定の始まりになります。
1) 良い仕事。住人に要求と信頼に応える
2) 自主・民主・公開
3) 労働者の生活と権利の保障
4) 組合活動を保障
5) 団員の学習活動重視
6) 住人運動の発展
7) 全国的観点

 まずは日本製紙争議団が設立した東葛病院の便所掃除を受託。現場は仕事に誇りを持っていた。それを全国に展開し、生協の物流も受託。ただし、生協は新自由主義の中でただのスーパーマーケット化し、下請いじめを始めたので撤退。2012年には内橋克人氏が「協同組合は資本主義の補完物なのか?」と疑問を呈します。高齢者協同組合から、介護保険制度の受け皿となり、指定管理者の児童館も。ただし、現場の職員からは「なぜ、労働者が経営議論をしなければならないのか?」という疑問も。それをアジテーションが得意な著者は「地域社会を考えよ」という観点で、現場で仕事を拡大することを「指導」していきます。そして、現場が従ってみると、みるみる労働者らが成長して行ったとか。そして最終的には、全党一致で、法制化へ。

 この本を読むと、日本では、現場からボトムアップで労働者協同組合や社会連帯経済が立ち上がったのではなく、全学連経験者のアジテーションで、労働者が渋々現場経営を始め、やってみると軌道に乗った、というような、和民のようなブラック企業の一面も感じました。というのは、この本には、著者がアジテーションをしていることは多く記載されてますが、労働者と対話している様子がまったく感じられないからです。

 それでも、世界的な潮流である労働者協同組合法は制定され、「自分たちで出資して、地域社会の仕事を創り、それで食べていく」という、NPOでも生協でもない団体が、届出制で設立できるようになりました。

 住人パワーで育ったラテン圏の社会連帯経済とは、ちょっと違う経緯ではありますが、せっかくのこの制度をどう活かすか?という観点で、もう少し知りたいなと思います。
  • 2025年10月02日19:13
< やりたいことをやってみること >

(メモ・感想です)

 意味のあるなしよりもまず、なぜかやりたいと思っていることをやってみること。やってみても展望は開けないかもしれないけれど、でも、自分にとっては前進になる。

 悩んでも解けないかもしれないけど、自由がそこにある。
  • 2025年09月28日19:22
< ギリシャからAI/数学まで、労働/仕事/活動を、知の巨匠と巡る旅 >

(メモ・感想です)

 ICUの方中心に新訳が出たので、初めて大著を一月弱かけて読んでみました。
- ギリシャ時代は、1)料理/食材作成等の生存に必要な消えものを無限供給する「労働」は家人や奴隷のものとされ、2)長期的に「世界」に残る作品を制作する「仕事」はともかくとして、3)自由にリスクある未来や物事の本質を言論で対話して「世界」を創るする「活動」が、意味あるものだったとのこと。
- キリスト教によって3)は退けられ、アメリカ大陸発見や2)の望遠鏡という道具制作によって、2)の制作が科学実験の本質となり、
- さらにデカルトの「我思う故に我あり」という内省によって、「世界」というものがゆらぎ始め、マルクスによって人類の生存のための1)の「労働」の価値が最上位に来る、という変化が起きた、と展開します。

 「社会」とは食べるための家事労働が広がったもの、という見方は新鮮でしたし、科学の内省化は「数学」という宇宙を超えた言葉への統合だというのは、そのとおりだと思います。

 そして、人類がこの世の中をどこまで理解できるのか?が疑問になってきた、と続きます。大抵のことはコンピュータ(今で言えばAI)の方が、それなりの答えを出すようになり、科学は地球全体を壊せるほどになり、人間って何?という時代になることを1958年に、ギリシャ時代からの歴史から紐解いた、ハンナ・アーレントの明晰さに驚きます。そして、話題がどんどん流れて広がるその博学さにも。

 でも、一人の人間が誕生することは「新たな可能性が誕生したということ」と、彼女は希望を提示します。キリストの生誕もその一例。生存以外のことは、すべて「贅沢」「無駄」とされる新自由主義のつまらない時代において、世界認識を言論/対話によって、人類はどこまで追求し、意味を見つけることができるのか? そう問うている本なのではないでしょうか?
  • 2025年09月23日05:34
< 「自分に厳しく」から湧き出る透明な文章 >

(メモ・感想です)

 日本では珍しい「個がある」大竹昭子の本や写真は注目してます。この本も、須賀敦子が亡くなって数年後に、その足跡を辿りながら、自分に厳しく、インチキでなく、張り裂けそうな中から生まれてきた須賀敦子の文体の背景を解き明かしてく良本です。

 ミラノの鉄道官舎、ヴェネツィアの梅毒女性病院跡やユダヤ人ゲット、ローマのハドリアヌス帝の孤高、そして東京に戻って約20年後に始めた執筆。信仰と向き合い、学ぶだけでなく現実とも向き合うこと、日本人離れした、一人で歩ける人。それは自分を客観視できる須賀敦子の文章に繋がりましたし、永井荷風や山の手街歩きの本を出したり、内田百閒風小説を出したりしている著者: 大竹昭子にも言える、清々しさでしょう。これからも著者の本・写真に注目していきます。
  • 2025年09月22日19:12
(メモ・感想です)

 Amazon推奨で「時のかけらたち」に続き読了。第2次大戦中、イタリア・ファシズムと闘ったパルチザン達が、1950年代に、カトリック神父を中心にミラノの教会の物置で本屋を始めました。みんなで対話をするコミュニティの場として。コミュニティは「ごっこ」だったのか、一人一人の人生とヨーロッパが感じられてくる、しっとりしたエッセイです。

小生の印象に残った点は以下です。
・リーダは、思い立ったら吉日の革新的神父/詩人。気骨のしっかりしたブルジョワの老婦人がスポンサ。独身者ばかりのインテリ達が店員。著者は神父の詩/活動を知り、その中に加わり、店員の一人と結婚。数年後、病で死別する。
・ミラノのドウモは巨大な木造船のよう。ファサードを背にして左側は庶民の街、右側は貴族的な街。戦前は半径500m位で通船堀が囲んでいた。
・社会の底辺にいる人の相談所としても機能。絨毯を肩に担いで売っていた文盲/気の良いエトルリア人がふっと消えた。モノはお金で買うことを知らず窃盗で度々捕まる戦争孤児が大きくなった大人。
・ドイツ人と結婚した、ユダヤ人の父を持つ娘が「ドイツではお父さんがユダヤ人だと決して言わないように」と夫に言われて傷つく。
・ミラノスカラ座の中にあるレストラン。貴族の社会は、綿々と続いている。
・山の方で独自にコミュニティ活動を始めた創立者の神父も、癌で死ぬ。
・出版担当も個人的事情で店を離れる。
・夫が亡くなって数年後、著者が日本に帰った後、中国の文化革命の影響で、コルシア書店は教会から追い出される。店員達の夢の残骸。重荷として支えていく、創立時からの女店長(貴族のお嬢様)

 どこかパール・バックの「大地」を思わせました。社会変革の夢を追うコミュニティ。20年保ちましたが、それは結局何だったのでしょう...。背骨がピンとした上流階級、コミュニティを信じたい青年達の共同書店。対話のコミュニティって何なのだろうと考えさせられてます。淡々とした筆で、ミラノと北イタリアの、著者が参加したその時代が描かれてます。
  • 2025年09月21日12:56
< お店/寺社紹介中心で地誌が浅く、るるぶ的 >

(メモ・感想です)☆3

 23区の中で初めての巻かと思います。一人ひとりが面白い杉並区は、バルセロナ並みに注目地域なのかもしれません。ハイソの井の頭線、サブカルの中央線、漫画/学生の西武新宿線等と地域され、寺社/お店が多数紹介されてます。

 ただし、紹介はごく軽く、荻外荘は「荻窪会談」があった国史跡とあるだけで、荻窪会談がファシズム推進の三国同盟/東南アジア侵攻決定だったことは書いてありません。また、地球の歩き方名物の口コミ欄も誰に聞いたのかわかりませんが、浅い気がします。出版社がいつの間にか、学研になっていることにも気付きました。

 下井草駅前の「ビストロシノワ陽」は今まで存じませんでしたが、リーズナブルかつ高品質な中華のようなので行ってみたいと思います。
  • 2025年09月20日16:20
< 見慣れた風景にドキドキ >

(メモ・感想です)

 阿佐ヶ谷の古い平屋を譲られた、高齢者にモテるマイペースの30歳前の男主人公と、美大に通い始めた従姉妹の日常。平屋に帰るのに、世尊院前の歩道橋や、関東バス阿佐谷営業所が出てくるので下井草1丁目か、と思いきや、吉祥寺駅から歩いて帰る道が登記所通りや早稲田通りではなく、青梅街道なので、平屋の場所は不明。

 エスカレータの「歩き側」を敢えて歩かない、というのは、「う~ん」という感じ。そういう人がいるのは知ってますし、その意図も認めますが、階段より3mでも早く昇り降りしたいことはあるのですよ...。でも、このゆったりペースが、これからどう展開するのか、楽しみではあります。

 時々、作者から読者に語りかける、メタな文章が入っているのはgood。最近は、区立図書館で漫画が借りられるようになったので、全編読んでみようと思います。
  • 2025年09月02日21:54
< ファイナル・アンサーを謳っている割に、疑問点が残る本 >

(メモ・感想です)

 日経BPが、国交省の「ZEH水準」が全然駄目なこと(気密やPVが無い)を批判しているのは傑作。「給湯」(風呂でなくシャワーを)、「蓄電池ではなくEVやエコキュートを」、「エアコンは6畳用か14畳用を(サイズが同じで畳数が大きいのは非効率)」、「庇が効かない東や西には窓を付けないか、既にあるなら外側で遮光」という点はユニークでした。

 2F以上で外側で遮光できる方法も載せてほしかったです。エコキュート系は値段が高いのに10年しかもたない点についての記述も。また、「屋根上PVはできるだけ多く搭載」という点は、台風/地震時の被害防止や低品質業者への注意等も欲しいところ。横浜にも事務所があるエコワークス社が推奨されてました。

 ただし、蓄電池無しでPVだけだと、九電のように出力抑制がかかってしまう原因になりそう。また、天気変化で地域全体の発電量が変わってしまって系統への負荷も高くなりがちかと。ファイナル・アンサーを誇っている割に、疑問点が残る本でした。
  • 2025年08月28日20:12
< トルーマンや昭和天皇含む史実を踏まえた、長崎原爆のノン・フィクション >

(メモ・感想です)

 後に被団協代表委員になった、長崎で被爆した郵便配達人: 谷口稜曄(スミテル)氏から1982年に話を聴いて、1984年に発刊された本の初完訳。名前がカタカナに約されていて、海外の方の目から書かれていることがわかります。

 軍/天皇、トルーマンの史実も含め、長崎に原爆が落とされるまでの経緯が記述される中で、14歳で中卒として自転車で郵便配達を伸び伸びと始めたスミテルが、配達中に被爆し、背中等に重度の火傷を負い、その後4年の入院、職場復帰を含めて、反核/反戦活動に人生を捧げていくことが、冷静な目で記述されています。

 開戦が、軍部/天皇のせいになっていて、国民/クウキ/メディアの責任に触れておらず、また中国との戦争にも殆ど触れてないところは今一つですが、でも、トルーマンが側近や科学者たちが諌めるのも聞かず、原爆を使った様子がきちんと描かれてます。

 映画は著者の娘が長崎を訪れる話のよう。著者が『ローマの休日』の記者のモデルだったことには驚きました。読みやすい本です。
  • 2025年08月26日21:05
< 登戸研究所資料館長による、事実に基づく満州事変->太平洋戦争経緯 >

(メモ・感想です)

 冷静沈着的確な著者による、日露戦争の真相(英国の代理戦争)、張作霖爆殺事件(1928)からの満州事変が太平洋戦争に必然的に繋がった論理、侵略賛美の靖国神社/日本会議らによる反省しない軍国日本の復活、が、鮮やかにわかりやすく、説得力と共に記述された本。名著だと思います。

 日露戦争を美化した司馬史観も、米軍による洗脳だったのかもしれません。「強きを扶け、弱きを挫く」伝統日本の醜さ/アコギさが、日本会議/神社の本質なのでしょう。そして、それが経済システム/AIによる、人権軽視に順応して、廃憲/再軍備へ。

 「こういう本を教科書にできたら、日本の将来も明るくなるのに」と歯がゆくなってきます。著者の本をもっと読んでみたくなりました。お薦めの一冊です。
  • 2025年08月26日21:00
< 登戸研究所資料館長による、事実に基づく満州事変->太平洋戦争経緯 >

(メモ・感想です)

 冷静沈着的確な著者による、日露戦争の真相(英国の代理戦争)、張作霖爆殺事件(1928)からの満州事変が太平洋戦争に必然的に繋がった論理、侵略賛美の靖国神社/日本会議らによる反省しない軍国日本の復活、が、鮮やかに説得力と共に記述された本。名著だと思います。

 日露戦争を美化した司馬史観も、米軍による洗脳だったのかもしれません。「強きを扶け、弱きを挫く」伝統日本の醜さ/アコギさが、日本会議/神社が本質なのでしょう。そして、それが経済システム/AIによる、人権軽視に順応して、廃憲/再軍備へ。

 「こういう本を教科書にできたら、日本の将来も明るくなるのに」と歯がゆくなってきます。著者の本をもっと読んでみたくなりました。お薦めの一冊です。
  • 2025年08月22日21:20
< 大本営発表を流した新聞の反省 >

(メモ・感想です)

 調査報道Tansaの推奨で読了。2008年は、戦争の権力者が死んで反省ができるようになり、記者等の一部が生き残っている最後のタイミングだったのでしょう。高齢の記者や関係者が、満州事変が石原莞爾の謀略だと知りながら誤報を流し、戦争推進に社是を変えた事実、戦後自由党総裁となった緒方竹虎が反戦を言わなくなった事実、等を丹念に取材した、1年以上の特集を本にしたもの。公家宰相: 近衛文麿や統制派: 東條英機、そして5.15事件で減刑嘆願した国民、「一億総懺悔」で責任回避する政治家/天皇らの駄目さも書かれています。

 朝日が再び戦争(含: 原発)推進を明らかにした現在では、もう発行できない本でしょう。「社員が食えるように」「軍や右翼から殺されないように」「戦争を始めた以上、政府に順応」と、事実報道をやめてしまうことは、今でも切実な問題。ジャーナリズムが殆どない、伝統日本において、政府広報に堕することを良しとせず、朝日新聞を退社して設立したTansaの偉大さがわかります。

 なんと、ダークツーリズムを提唱し、治安維持法の記念碑: 旧豊多摩刑務所表門(旧中野刑務所正門)の保存を唱えたハーバード大: アンドルー・ゴードン教授の感想も最後に記載されてます。検証作業をしっかりと行った、良書です。
ヨドバシカメラご利用開始